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2016年11月
理化学研究所(理研)脳科学総合研究センター理研-MIT神経回路遺伝学研究センターの
	  ジョシュア・キム研究員、利根川進センター長らの研究チームは、
	  マウスにおいて、
	  嬉しい体験と嫌な体験にそれぞれ対応した神経細胞は扁桃体基底外側核[1]の異なる領域に局在し、
	  互いに抑制することを発見したと発表した。
「嬉しい」「嫌だ」といった情動体験は、その体験に特有な行動を引き起こす。
	  マウスでは、嬉しい体験は繰り返そうとし、
	  嫌な体験にはすくみ行動(じっとその場に動かなくなる行動)をとったり、その体験を避けたりする。
	  これまでの研究により、どちらのタイプの行動も脳内の扁桃体にある基底外側核の働きによって引き起こされることが知られていた。
	  しかし、嬉しい体験で働く神経細胞(嬉しい体験細胞)と嫌な体験で働く神経細胞(嫌な神経細胞)が
	  基底外側核内で混在している説と異なる領域に局在している説があり、その詳細は不明であった。
今回、理研の研究チームは、
	  嬉しい体験細胞と嫌な体験細胞の特徴を調査した結果、
	  嬉しい体験細胞は扁桃体基底外側核の“後方”に局在し、
	  嫌な体験細胞は扁桃体基底外側核の“前方”に局在していることが分かったと発表している。
また、マウスの脚に軽い電気ショックを与えながら、
	  嫌な体験細胞の働きを光遺伝学(2)で人工的に抑えるとすくみ反応が減少し、
	  マウスが鼻先を壁の穴に入れると報酬の水をもらえる装置で、
	  マウスが水をもらっている最中に嬉しい体験細胞の働きを人工的に抑えると、
	  鼻先を穴に入れる回数が減少した。
	  このことから、嬉しい体験細胞および嫌な体験細胞の活動が、
	  それぞれの体験に特有な行動を“実際に”引き起こすことが明らかになった。
さらに研究チームは、嬉しい体験細胞と嫌な体験細胞は、互いに抑制し合うことも明らかにしている。
この成果は、今後うつ病に代表されるような情動障害において、
	  嬉しい体験細胞と嫌な体験細胞を別々に操作することができれば、
	  新しい治療法の開発への道を拓くこととなる。
	  また、それぞれの細胞群の特徴に照準を絞って治療薬の探索を行うことで、
	  より的確な情動障害治療の創薬につながることが期待できる発見である。
〔1〕大脳辺縁系の一部である扁桃体内の亜核で、外側核からの入力を受け、情動行動を制御している中心核へ出力する。
      〔2〕光遺伝学とは、光感受性タンパク質を発現させた神経細胞群に局所的に光を当て、その働きを活性化させたり抑制させたりする技術のこと。
理化学研究所 『嬉しい体験と嫌な体験は互いに抑制し合う』