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豊かな音環境がマウスの寿命を延長することを発見

2018年7月

 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP、東京都小平市 
理事長:水澤英洋)らの共同研究グループが、マウスに自然環境音を聴かせ
ながら飼育することによって、平均寿命が最大17%延長することを世界で初め
て発見しました。
動物をとりまく環境が、その生存や健康に大きな影響を及ぼすことは広く
知られており、環境問題は現代社会の中でも特に高い関心を集めています。
これまで、健康面や安全面から環境を評価する尺度(ものさし)としては、
環境の中に存在する有害物質や放射線の量など、〈物質〉と〈エネルギー〉
が専ら使われてきました。一方、環境が特に脳神経系に及ぼす影響を評価す
るためには、〈物質〉と〈エネルギー〉に加えて〈情報〉という尺度を欠く
ことができません。本研究は、そうした情報環境の中でも生命に常に接し続
けている音環境を豊かにすることが、平均寿命の延長という、動物の生存に
対して包括的かつポジティブな影響を及ぼすことを世界で初めて示したもの
です。
今回の発見は、私たち人間をとりまく音環境、ひいては視聴覚情報やコミ
ュニケーション情報などを含む〈情報環境〉の安全性や快適性を考える上で
重要な知見を提供すると同時に、情報環境の改善によって精神・神経疾患に
迫る新しい治療法「情報環境医療」の開発に大きく寄与することが期待され
ます。 

■研究の背景
動物の生育環境を豊かにすることが、脳の発達や可塑性を促し、不安様行
動を緩和するといったような、生存にとってポジティブな効果をもつことは、
〈環境エンリッチメント〉として知られています。こうした環境エンリッチ
メントの効果を人間に応用しようという試みも幾つか行われていますが、未
だその効果を高い統計的信頼性の元に示した研究はほとんど見られません。
本研究では、「情報環境学」の観点から、実験動物であるマウスの飼育環境
の音情報に着目し、音環境の違いがマウスの寿命にどのような影響を及ぼす
かを長期飼育実験により検討しました。
 
■研究の内容
実験では、生後8週齢のマウスを、以下の3つの異なる音環境の元で飼育
しました。
(1)高周波を豊富に含む熱帯雨林の環境音を呈示する広帯域音響条件
(2)同じ音源から20kHz以上の高周波成分(マウスがコミュニケーションに
主に用いる帯域成分)を除去した音を呈示する狭帯域音響条件
(3)通常の実験動物飼育環境の暗騒音下で飼育する対照条件
各条件とも、オス16匹、メス16匹の合計32匹を、1ケージ4匹ずつに分
けてオス・メス別々に飼育しました。各ケージ上部には音響再生装置と赤外
線カメラが一体化した特別に開発したスピーカーを設置しました。広帯域音
響条件と狭帯域音響条件ではスピーカーから上記の環境音を呈示するのに対
して、対照条件ではスピーカーから音は呈示せず飼育室の暗騒音のみとしま
した。ケージの大きさを含むその他の要素は、通常のマウスの飼育環境と全
く同じにしました。マウスの自発活動は赤外線カメラにより持続的に記録し
ました。なお、この実験では、マウスの自然な寿命を検討するために、採血
などマウスにストレスを与えるような侵襲検査は一切行っていません。

 
■今後期待される展開
本研究の結果は、通常の飼育環境に自然環境音を加えて音環境を豊かにす
ることにより、マウスの自然寿命が延長することを示した世界初の報告であ
り、音が環境エンリッチメントのポジティブな効果を導く上で重要な要素と
なっていることを示しています。特に、音環境を豊かにしたことによりケー
ジ内の最短寿命が延長し、個体間の寿命のばらつきが小さくなるという効果
がオスで有意に認められたことは、個体間の優劣関係がオスでより顕著に観
察されることと関連している可能性が考えられます。すなわち、音環境を豊
かにすることは、社会的な緊張関係を緩和して、攻撃やいじめなどによるス
トレスを減少することにより、皆が仲良く長生きする「ピンピンコロリ」の
状態を導く可能性が示唆されます。
マウスの実験結果を短絡的に人間にあてはめることには慎重である必要が
ありますが、本研究の成果は、今後人間にとって安全・安心・快適・健康な
環境を実現するうえで、音環境を含む情報環境を適切に設計して整備するこ
との重要性を示していると言えます。同時に、さまざまな精神・神経疾患に
対して、脳の物質的な側面に手を加えるだけではなく、情報環境を整えるこ
とで情報処理の側面からアプローチする新しい治療法「情報環境医療」の開
発に大きく寄与することが考えられます。

この研究成果は、Nature誌の姉妹誌であるScientific Reports誌オンライ
ン版に日本時間2018年5月21日午後6時(イギリス夏時間5月21日午前10
時)に公開されました。
 

Yamashita Y, Kawai N, Ueno O, Matsumoto Y, Oohashi T, Honda M  Induction
of prolonged natural lifespans in mice exposed to acoustic environmental
enrichment.  Scientific Reports, May 21, 2018 (Online publication).
DOI: 10.1038/s41598-018-26302-x
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-018-26302-x

※プレスリリースより一部抜粋して掲載しております



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