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2017年5月
震災や戦争等を体験して心に深い傷を負うと、PTSD*1を発症することがある。
PTSD になると、日常生活のあらゆる場面でトラウマ記憶が蘇ったり、悪夢に悩まされたりし、生活が非常に困難になる。
近年 PTSD は、持続エクスポージャー療法(以下 PE)*2など、
トラウマに焦点をあてた認知行動療法により治療可能であることが分かってきた。
PE は従来の治療に比べて短期間での治療が可能だが、
それでも3 カ月程度はかかることや、すべての医療機関において治療が受けられるほどには普及していないこと、
辛い記憶を繰り返し思い出さなければならないため精神的な負担が大きいことなどから、
新しい治療法の開発が期待されてきた。
今回、研究グループは、夢が睡眠中の記憶の処理に関わっているという先行研究からヒントをえて、
睡眠中にトラウマ記憶を弱めることのできる方法を検討した。
箱に入れたマウスに特定の音を聞かせ、直後に軽い電気ショックを与える。
このショック以降、マウスはこの音を聞かせるだけでおびえた反応(恐怖反応)を示すようになる。
本研究では、音を聞かせて電気ショックを与えた後 4 時間以内に、
睡眠中のマウスに同じ音を、起こしてしまわない大きさで聞かせた。
すると、24 時間後の反応に変化が現れ、睡眠中に音を聞かせたマウスでは、
音を聞かせなかったマウスよりもおびえた反応が弱まっていた。
また、睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠というふたつのステージがあり、
どちらが上記の変化をもたらしたのかを調べた結果、
ノンレム睡眠中に音を聞かせた場合にだけ、おびえた反応が弱まることが明らかになった。
本研究は、心理的な不快感を伴わずに、睡眠中にトラウマ記憶を減弱できたという点で、
きわめて画期的であると考えられる。
この研究より、PTSD 患者に苦痛を与えることなく睡眠中に治療できる可能性が示された。
今後研究グループは、今回明らかになった条件において
どのような脳内メカニズムがトラウマ記憶の減弱を引き起こしたかを検討していくと述べており、
PTSDの病態解明と新たな治療法の開発につながることが期待される。