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−福島原発所員の3年間の追跡調査から−

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差別・中傷などの社会批判による心的外傷後ストレスは強く持続する
−福島原発所員の3年間の追跡調査から−

2017年4月

順天堂大学大学院医学研究科・公衆衛生学講座の野田愛准教授、谷川武教授らの研究グループは、
福島原子力発電所員のメンタルヘルスについて追跡調査を実施し、
災害関連体験と心的外傷後ストレス反応(PTSR:posttraumatic stress response)(※)との間に
因果関係があることを明らかにしたと発表した。

研究グループは2011年〜2014年までの3年間の縦断研究を実施し、
原子力発電所員のメンタルヘルスを長期的に調査することで、
福島原子力発電所事故後の災害体験との因果関係について検討した。

まず、災害2-3か月後(2011年)に福島原発所員に対して実施した自己記入式アンケート調査をもとに、

@ 自分の命に危険が迫る体験や発電所の爆発などの「惨事ストレス」、
A 同僚を失った「悲嘆 体験」、
B 財産喪失、自宅からの避難といった「被災者体験」、
C「差別・中傷」などの社会批判を受けた等、

@〜Cの災害関連体験を経験した所員と経験しなかった所員に分け、PTSRの有無を評価した。
その結果、「惨事ストレス」、「被災者体験」、「差別・中傷」といった災害関連体験を経験した所員のPTSRのリスクは、
いずれも時間とともに徐々に低下する傾向があったが、経験していない所員に比べると、
3年経過してもなお、PTSRのリスクが持続することが認められた。

特に、「差別・ 中傷」といった社会批判を受けた所員は、受けていない所員に比べて、
2011年では約6倍、2014年時点でも未だ約3倍のPTSRリスクが有意に高いことが明らかになった。
また、同僚を失った「悲嘆体験」経験がある所員は、経験のない所員に比べて2011年で約2倍、
2014年時点においても回復することなく同等のリスクがあることが認められた。
つまり、「悲嘆体験」といった悲しみの感情はずっと引きずることがわかった。

以上のことから、 「惨事ストレス」、 「悲嘆体験」 、「被災者体験」、「差別・中傷」といった災害関連体験は、
長期間持続して、PTSRに強い影響を及ぼすことが考えられる。

災害後4〜12ヵ月の間、メンタルヘルスの不調を訴える所員に対して、
精神科医や臨床心理士が、継続的に治療や心理カウンセリングを提供し、精神的支援を行ってきたが、
本研究により、 彼らが受けた災害関連体験、特に差別・中傷などの社会批判によるPTSRは、
長期にわたり持続していることが明らかとなり、今までの支援では不足していることがわかった。
所員のメンタルヘルス を良好に保つためには、組織的な介入策など広範囲にわたる長期的な支援が必要である。
このことは、原発事故のみならず、
多くの災害等における支援者ならびに被災者のメンタルヘルス対策を考える上で重要であると考えられる。

 

差別・中傷などの社会批判による心的外傷後ストレスは強く持続する

 

※心的外傷後ストレス反応(PTSR:posttraumatic stress response):
誰にでも苦悩をもたらすような強いストレスを受けた後、正常に起こる心理的反応。
@「再体験(侵入)」(繰り返し思い出す)、A「回避・麻痺」(避けてしまう・感情が麻痺する)、B「過覚醒」(神経過敏になる)
が生じるが、時間とともに軽快する。

 


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